認知症
認知症
当院では、軽度認知障害(以下、MCI)や認知症の早期診断を行い、進行の予防や症状
の改善をはかるように治療を開始します。
年をとっていくたびに増えてしまうのが“もの忘れ”です。私たちの記憶力は30歳から40歳をピークにしてその後はゆっくり低下していくと考えられており、もの忘れは、加齢に伴ってどなたでも経験します。ただ、このもの忘れには、年齢相応に起こってくる生理的なものと、軽度認知障害(MCI:健常と認知症の中間段階)や認知症の初期段階といった病的なものが存在しますので、その原因を見定める診断がとても重要になります。
病気によるもの忘れであっても、早期発見や適切な治療を行うことで回復するものもあります。根本的な治療法が確立されていないアルツハイマー型認知症などでも適切な薬物選択や生活指導を行うことで、症状の改善や進行抑制が期待できます。
当院では「病的なもの忘れ」を早期に発見し、適切な治療につなげられるように、専門医による診察、神経学的検査、神経心理検査、画像検査などを用いて、総合的な診断を行っています。
加齢によるもの忘れと、認知症の症状としてのもの忘れの違いは、もの忘れを認識(自覚)できているかどうかです。たとえば、加齢によるもの忘れは「食事をしたことは覚えているが、何を食べたのかを思い出せない」というものです。対して認知症は「食べたこと自体を思い出せない」といった違いがあります。
下記のようなもの忘れの症状は、認知症の初期症状の可能性があります。このような症状がみられたら、一度、検査を受けることをおすすめします。ご自身では気づかないことも多いため、周囲から受診をすすめられた時にも気軽に検査を受けるようにしましょう。また、ご家族に下記のような症状があった場合、ご本人が抵抗なく受け入れられるように配慮しながら受診を促すようにしてください。
認知症にはいくつかの種類があり、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症が8割を占めるといわれています。それらに次いで多いのがレビー小体型認知症です。また、年齢に伴うもの忘れと認知症の中間的な段階にある軽度認知機能障害(MCI)があります。いずれもできるだけ早期に適切な治療を受けることが重要です。
ものごとを記憶したり、判断したり、順序立てて行うなどの脳の機能を認知機能といいます。認知症は、この認知機能の低下によって、日常(社会)生活に支障が出るようになった状態をいいます。多くの場合、徐々に認知機能が低下して認知症になりますが、認知機能が正常とも認知症ともいえない中間の状態があります。これを「軽度認知障害」と呼びます。もの忘れが目立つものの日常生活には支障がないという状態であり、現在、この軽度認知障害の段階で発見し、原因を診断したうえで、治療方針を立てることが認知症の診療の重要なポイントになっています。
日本人で最も多い認知症で、全体の6割以上を占めています。アルツハイマー病は、1907年にドイツのアロイス・アルツハイマー博士によって報告され、その名がつきました。脳にアミロイドβやタウ蛋白という特殊なたんぱく質が沈着し、それにより正常な脳神経細胞が破壊されることで発症すると考えられています。
アルツハイマー型認知症の進行には以下の3段階があります。
脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が起きて、その後遺症として認知症になるものです。脳血管障害によって突然認知症を発症したり、小さな脳梗塞(かくれ脳梗塞)がたくさんあることで徐々に認知症が現れたりする場合もあります。障害を起こした部位によって失われる機能や症状が異なります。理解力や判断力は保たれ人格はしっかりしているように見えても、記憶力が低下しているというような「まだら認知症」もみられます。脳血管障害を引き起こす原因となる、高血圧、脂質異常症、糖尿病、心臓病などの生活習慣病を患っていることも特徴です。
認知症にはほかにも、レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症などがあります。
問診では、認知症病型分類質問表(DDQ43)や長谷川式HDS-R、時計描画テスト(CDT)などを行います。また、頭部MRI検査と同時に、必要に応じてVSRAD(認知症分析)を行います。こうした検査を定期的に受けていただくことで、認知症の適切な予防と、早期発見・治療が可能になります。また、脳血管性認知症の発症や進行には動脈硬化も大きくかかわっていますので、そうした既往症も含めてトータルにサポートします。